標的型メールは見抜くことが難しい。は誤りです

本気でやっているからこそあえて言おう。間違った訓練をありがたがるな!

日本年金機構の情報漏洩事件をきっかけに、標的型メール訓練への注目度は俄然アップしたと実感することが多々あります。実際、訓練サービスを提供している某社では、昨年の5倍の問い合わせ件数だそうです。

マイナンバー制度も始まり、情報漏洩対策は今が旬とも言える事柄だけに、広告や記事風の広告も多く見受けられるのですが、それだけに、最近、よく思うことがあります。

それは、訓練の本当にあるべき姿が模索されないまま、間違った訓練ばかりが大手を振って歩き、それが訓練実施のスタンダードになってしまうという懸念です。

実際、どことは言いませんが、明らかに間違っていると思えるようなことをWebサイト上で堂々と謡っているのを目にするケースもあります。

あくまで私個人の推測に過ぎませんが、このようなケースは、Web制作会社にサイト作成を丸投げで、標的型メール訓練について何も理解していない業者が作ったサイトを、大して確認もせずにそのままインターネットに公開しているせいなのかもしれません。

しかし、標的型メール訓練サービスを提供している担当者自身に矜持も何もなく、Webサイトに掲載しているとおりの内容を、何の疑いも持たずに顧客に提供しているのだとしたら、それは罪深いことだと思いますし、ましてや、それをありがたいと思ってしまうお客様はとても不幸だと思います。

そして、クライアントからお金をいただいての作業だから仕方が無いとはいえ、そのような業者を推薦するような記事風広告を書いてメディアに掲載するマスコミもまた、罪深い存在に思えてなりません。

たとえ間違った内容であっても、市場で大勢を占めればそれがスタンダードになりえます。しかし、間違った内容ですから、時間の経過と共に、段々とその綻び、問題点が出始めることになります。その結果、訓練なんて役に立たない、やっても意味が無い。といったことになってしまうのではないか?

たとえそこまで行かなくとも、本来ならもっと素晴らしい結果が得られる可能性があるのに、その可能性が見いだされないまま、訓練なんてこんなもの。といった固定概念ができてしまうのではないか?

訓練実施のうわべばかりが取り沙汰され、その本質や、あるべき姿について語ろうとする者が出てこなければ、誰もそのようなことについて考えようとはしないと思います。

私自身、これまでに幾つもの会社の訓練実施に立ち会い、また、ご相談をいただくことも多いのですが、どの会社も訓練実施に関しては緒についたばかりで、成熟した訓練を実施しているところは未だ見たことがありません。

実際、標的型メール訓練というものが実施されるようになったこと自体がここ数年の話なので、世の中に成熟した訓練を実施できるような経験を持った組織など存在するはずがないのは当然のことです。

例えば、「この開封率は業界平均で見たらいい方ですか?それとも悪い方ですか?」と聞かれることは多くあります。業界の中で、自社だけが他社よりも遅れを取っていたらまずいよね。と思う気持ちはよくわかります。

しかし、平均値の出し方など全く定義されていませんし、業界標準を定める活動すら存在しない現状にあっては、業界平均など出せるはずがありません。にも関わらず、10%以下だから良いとか、回数を追って開封率が下がってきているから良いとか、うわべだけを見て喜んだり、安心したりするケースがあるのは正直いただけないと感じています。

良くも悪くも、標的型メール訓練というものについては、まだまだ試行錯誤が必要であると思いますし、有るべき姿について、もっともっと議論されて然るべきだと思います。

添付ファイルを開封した社員を教育コンテンツに誘導して勉強させたり、所属部署別や役職別の開封率を集計してあーだこーだと分析するのが「標的型メール訓練」だと、世間では思われているような気がしてならないのですが、そんなものは所詮、訓練実施における一つの断面でしかなく、もちろんそれが必要となる場面もありますが、それが全てというわけではありません。

標的型メール訓練サービスを提供する会社はずいぶん増えましたが、標的型メール訓練のあり方、あるべき姿について真剣に考え、サービス提供に取り組んでいる会社は一体どれだけあるでしょうか?

今が旬だし、お客さんからも問い合わせがあって、儲かりそうだからウチもやるか。といった軽いノリで参入している会社がいて、そんな会社から営業を受け、ありがたがってサービスを受けているお客様がもしいるとしたら、お客様が気づかないでいる分、実に不幸なことだと思います。

そして、訓練実施に関して何の矜持も持たない会社が、実のない訓練サービスを提供することで、訓練やったけど、あれって意味ないよね。というイメージが出来上がってしまったり、形だけの訓練実施になっていってしまったりするようでは、それこそ、多くの企業にとって不幸なことだと思います。

だから、そうなる前に、標的型メール訓練の有るべき姿について模索すべきであるし、また、有るべき姿について、多くの人が声を上げ、議論を重ねていくべきだと思います。

当然、このサイト自身、その先頭に立って、これからも情報を発信していきたいと考えているわけですが、この記事を読まれて、自社内でも訓練実施のあり方について、もっと色々と考えてみるか。と思って頂けたら何よりです。

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